地域に愛される企業ブランドをつくるには? Sky Connect・松浦哲也さんに聞く

地域社会との共存共栄は、現代の企業にとってますます重要なテーマとなっています。特に、地域に根ざしてサービスを提供する企業にとって、地元の人々から愛され、信頼されるブランドをいかに構築していくかは、事業の継続と発展に不可欠な要素と言えるでしょう。

千葉県船橋市と習志野市を拠点に、デイサービスと訪問看護ステーション「Action+(アクションプラス)」を展開する株式会社Sky Connectは、まさに地域と共に歩む企業の一つです。同社代表取締役の松浦哲也さんは、理学療法士としての経験を活かし、利用者一人ひとりに寄り添ったサービスを提供するだけでなく、地域全体を元気にするためのユニークな取り組みを積極的に行っています。

その代表的な活動が、高齢者の社会参加を促進する「ななしょくプロジェクト」です。このプロジェクトは、単なる社会貢献活動に留まらず、利用者、協力企業、地域社会、そしてSky Connect自身にとってもメリットのある関係性を築き上げています。
本記事では、松浦さんに「ななしょくプロジェクト」の詳細や、地域連携を通じて見えてきた「地域に愛される企業ブランド」を構築するための秘訣について、詳しくお話を伺いました。

地域と介護がつながる「ななしょくプロジェクト」

松浦さんが生まれ育ったのは習志野市。地元への貢献意識は、Sky Connectの事業展開の根底に流れています。「やっぱり地元に貢献したいという思いがあって」と語る松浦さん。その想いを具現化したのが、「ななしょくプロジェクト」です。

このプロジェクトは、Action+のデイサービス利用者が、地域の店舗で実際に働く機会を提供するというものです。具体的には、船橋駅近くのドトールコーヒーショップやセブン-イレブンといった誰もが知る店舗と連携。利用者の方々は、1時間程度の短い時間ではありますが、それぞれの店舗で清掃や品出し、接客補助といった業務に携わります。

「ただのボランティアではなく、実際に1時間働くことによって、お給料も出ます。ドトールさんでは商品券、セブンイレブンさんでは現金という形です」と松浦さんは説明します。この「働く」という行為が、高齢者にとって単なるレクリエーションではなく、社会との繋がりや役割意識を再確認する大切な機会となっているのです。

この「働く」という行為が、高齢者にとって単なるレクリエーションではなく、社会との繋がりや役割意識を再確認する大切な機会となっているのです。

プロジェクト立ち上げの背景には、高齢者が地域の中で孤立することなく、生きがいを持って生活できる社会を実現したいという松浦さんの強い願いがあります。
介護事業所って、なかなか地域と繋がっていなくて、閉鎖的なところも多い。だから、もっと外部に出て、働くことでやりがいや生きがいを感じてほしい
そんな想いが、このユニークな取り組みを生み出しました。

プロジェクトがもたらす、多方面への好影響

「ななしょくプロジェクト」の特筆すべき点は、関わる全ての人々にとってメリットのある仕組みが構築されていることです。

まず、利用者である高齢者にとっては、社会参加の機会を得られるだけでなく、働くことを通じてリハビリテーションの効果も期待できます。実際に、プロジェクトに参加することで表情が明るくなったり、活動的になったりする方も多いと言います。また、ささやかであっても報酬を得ることは、自己肯定感を高めることにも繋がります。

次に、協力企業である店舗側にとってもメリットは少なくありません。人手不足が深刻化する中で、高齢者の労働力は貴重な戦力となります。また、地域貢献活動として企業イメージの向上にも繋がります。松浦さんによると、「(店舗の)作業で誰かがやらなければいけない軽作業は、社員ではなく有償ボランティア的な方がやってもらえると企業さん側も助かるようです」という側面もあるようです。

そして、地域社会にとっても、高齢者の孤立を防ぎ、多世代が交流するきっかけとなるこのプロジェクトは大きな意義を持ちます。利用者の方々が店舗で働く姿は、地域住民にとって「高齢者もまだまだ活躍できる」というポジティブなメッセージとなり、世代間の理解を深めることにも貢献しています。

最後に、Sky Connectにとっても、このプロジェクトは企業ブランドの向上や、新たな事業機会の創出、そして何よりも社員のモチベーション向上に繋がっています。「何か地域に貢献したい」という想いを持つ社員にとって、自社の取り組みが実際に地域を元気にしていることを実感できるのは、大きなやりがいとなるでしょう。

地域に愛されるブランド構築の秘訣は? 松浦さんが語る「繋がり」と「可能性」

「ななしょくプロジェクト」の成功の背景には、松浦さんの地域に対する深い思い入れと、人を繋ぐことへの情熱があります。地域に愛されるブランドを構築するために、松浦さんが大切にしていることは何なのでしょうか。

人を繋ぎ、可能性を創る」という企業理念を掲げるSky Connect。松浦さんが重視するのは、地域の人々や企業との間に生まれる「繋がり」です。「ななしょくプロジェクト」も、まさに利用者の方々、協力してくださる店舗、そして地域住民という様々な「人」を繋ぐことで成り立っています。

そして、そうした繋がりの中から、予期せぬ「ご縁」や「新たなチャンス」が生まれてくることを、松浦さんは肌で感じています。例えば、プロジェクトを通じてSky Connectの活動を知った地域住民の方から、新たな介護サービスの相談が寄せられたり、別の企業から連携の申し出があったりすることもあるかもしれません。あるいは、働く高齢者の方の姿を見た若い世代が、介護の仕事に興味を持つきっかけになるかもしれません。

ただ実際には「目先の利益のためだけに動くとかっていうのはあんまり考えていないんです」と松浦氏は語ります。地域との信頼関係をじっくりと育み、長期的な視点で関わっていくこと。それが、結果的に企業としての成長にも繋がり、新たな可能性を拓いていくと信じているのです。

地域に貢献したいという純粋な想いが、人々の共感を呼び、自然な形で「ご縁」を引き寄せ、それがまた次の「チャンス」へと繋がっていく。この好循環こそが、地域に深く根ざし、愛される企業ブランドを育む土壌となるのでしょう。

企業と地域とのかかわりが、長期的な好循環を生む

「ななしょくプロジェクト」は、Sky Connectの地域貢献活動の一つの形ですが、松浦さんはさらに先の展開も見据えています。
「今後は、小学生の身体機能を上げるイベントとか、そういうのもやっていきたい」。高齢者だけでなく、次世代を担う子どもたちの健全な育成にも貢献したいという想いが、新たな活動の原動力となっています。

企業としての成長戦略と地域貢献を両立させることは容易ではありません。しかし、地域に必要とされ、信頼される存在となることが、結果的に企業の持続的な成長にも繋がるという信念を持っているのです。

松浦さんへのインタビューは、地域に愛される企業ブランドを構築するためには、事業活動を通じていかに地域社会に貢献し、人々と温かい繋がりを築いていくかが重要であることを教えてくれました。地域の実情を深く理解し、そして自社のリソースを活かし、地域社会との間にどのような価値共創の関係を築けるのかを考えていくことが、サステナブルな地域密着型企業の第一歩だと感じました。

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